ひな祭りの皆既月食

 ひな祭りの宵に皆既月食が起こる。皆既月食の魅力は、皆既になったときの幻想的な赤い月であることは言うまでもない。皆既月食では、月が完全に影の中に入ってしまうため、月の姿は見えなくなるはずだが、実際は赤黒い月がぼんやりと見える。これは、地球の大気を通過したときに待機が凸レンズの役目をして太陽の光が内側に曲げられて、月をうっすら照らすためだが、太陽光が通過する際に、短波長の青系統の光は待機中の水蒸気や塵に散乱され、波長の長い赤系統の光だけが月に届くために赤い月が浮かび上がる。


 皆既月食の色彩の変化は、灰色の月が欠けて行くに従って赤みを帯び、皆既中は赤銅色になって、再び灰色の月に戻って行くという感じだが、実際はそんな単純なものではない。食のようすを双眼鏡や望遠鏡でじっくり眺めると、欠け始めると同時にデリケートな色彩の変化が繰り広げられ、皆既前後には思いがけない色彩の変化が見られることがある。しかしこれらの色彩の微妙な変化は、現在の高性能のデジタルカメラで撮影しても、残念ながら完全には表現することはできない。目で見て初めてわかることなのだ。
 さらに、皆既中の月の明るさは、月食のたびに異なる。これは,地球の大気の澄み具合に関係している。つまり大気中の水蒸気量やチリの量が増えると皆既中の月は薄暗くなるのである。実際大規模な火山噴火が起こった後の皆既月食では、皆既中の月がほとんど見えなくなってしまう。まさに1993年6月4日の皆既月食がその典型だった。1991年6月12日に起こったフィリピンのピナツボ火山の大噴火によって舞い上がった火山灰が成層圏まで舞い上がり、待機を汚してしまった。おかげでその年は冷夏となり、コメが不作となってタイ米を緊急輸入したことを覚えている。その噴火の影響を受けて1993年6月4日の皆既月食の皆既中の月は、ほとんど見えなくなってしまった。昨年9月8日の皆既月食の皆既中の月も暗かったが、比較にならない程だ。


 今回の皆既月食はどうだろうか?近年火山活動が世界的に活発な傾向にあるようだが、ピナツボ火山の大噴火のような巨大噴火は起こっていないので、見えなくなるようなことはないだろうが、前回9月8日よりも明るいか暗いか、ぜひ確認したいところだ。

 月食ウォッチングは、肉眼でもできなくもないが、より微妙な色彩変化を楽しむには望遠鏡や双眼鏡・スポッティングスコープを用意したい。倍率は高い必要はなく、双眼鏡で7倍から10倍、望遠鏡やスポッティングスコープでも20倍から30倍もあれば十分だ。

 ただ、天気が気がかりではある。テルテル坊主を用意しておきたい。

2026年02月28日