カノープスを拝む
シリウスに次いで2番目に明るい恒星、りゅうこつ座のカノープスが、大晦日のじょなの鐘が鳴り響いている頃、南の地平線わずか3°の地平線スレスレのところに顔を出す。
この地平線や水平線スレスレに見えるこの星には、日本各地でも昔から気がついていた。中国四国地方では『横着星』、その他の地方でも『不精星』『道楽星』などと呼ばれ、なまけものの代表格になっている。他に海のしぶきがざぶざぶかかるように見えることから『ざぶざぶ星』という呼び名を与えている地方もある。
所変わってかつて中国の都であった洛陽や西安では、地平線スレスレのところにほんの短い時間しか見えないカノープスを南極老人星と呼んで、この星が南の地平線上に明るく見えたときは、迎える年は天下泰平・国家安泰のしるしだと慶ばれたという。また、この星が赤く見えることから、七福神の一人で酒好きでいつも赤ら顔をした寿老人に見立てていたため、この星を拝むことができたら、長生きができると尊ばれた。
というわけで、我が家では毎年新年を迎えると同時にカノープスを拝むことにしている。
以前はわざわざ高台の公園に出向いて見ていたが、数年前我が家の屋上でも30分間だけ見えることがわかり、文字通り無精をして無精星を眺めることになった。
今年は、年越しの夜は南の地平線付近に雲が張り付いて姿を見せず、元旦早々から能登地震が起こった。夜はべた曇りで見えず気分が滅入った。そして2日は、羽田空港でとんでもない事故。なんという波乱含みの新年の幕開けと思いつつ、2日の夜もカノープスに挑戦。この日は快晴でカノープスもばっちり拝むことができた。能登地震、羽田事故で亡くなった方の冥福を祈るとともに、1日も早い復興をお願いした。
でも今年はいろいろなことが起こる1年になりそうな気配。
長寿の架け橋 2024年1月2日23:08~23:48撮影