★晴れない夜は短い6月の星空
6月というと低くたれ込めた灰色の雨雲と、ジメジメとした湿気で、憂鬱な気分にしてくれる梅雨を連想してしまうが、上旬は初夏らしいさわやかな青空を見せてくれる日が意外に多いのだ。こんな夜は透明度もいいので、あっと驚くような美しい夏の星空に出会える。梅雨が明けて本格的な夏を迎えるころは、大気の水蒸気量が増えて、透明度が落ちるので、今のうちに天の川がダイナミックに流れる夏の星空を先取りしておこう。初夏を迎え、さすがにしし座は西の空へと傾いたが、おおぐま座・うしかい座・おとめ座の春の南北ラインは、天頂を貫いて、まだまだ夜空の主導権は春の星座が握っている。しかし気がつくと、北-東-南にかけての地平線上には、まるで霞のように夏の天の川が横たわっている。すでに北東の空には、こと座のベガ・わし座のアルタイル・はくちょう座のデネブがつくる、夏の大三角が横たわって出番を待っている。また東の空からは、大蛇を抱えた巨人へびつかい座が、のっしのっしと昇り、南東の空には、夏はオレの季節と言わんばかりに、さそり座が上半身をもたげ、赤い1等星アンタレスが不気味に輝いている。
★南十字星何処?
風薫る5月。おとめ座が南の空でくつろぐころ、地平線の少し下で南十字星が南中する。星が好きになると一度は見たい南十字星、サザンクロス……なんと南国情緒溢れる響きか。日本(本土)からは見ることが難しいだけに、なおさら想いが募る。

6月4日 金星が東方最大離角
このところ宵の西空で存在感をぐんぐん増していた金星が、6月4日に東方最大離角を迎え、宵の明星としての優美さを惜しみなく放っている。日没30分後の高度は、およそ30度、西の地平線に沈むのはなんと22時。夕焼け空から薄明が終わり夜のとばりが下りる3時間もの間、-4.4等という1等星の100倍以上のパワーで輝いているのだから、その存在感は格別だ。
東方最大離角とは、地球から見て、内惑星が太陽から最も離れて見えるときのこと。そのときの太陽からの離角は、金星では47°程となる。また、太陽-内惑星-地球が作る角度がほぼ90°になったときでもある。最大離角は太陽の両側で起こるが、太陽より東側に離れたときを東方最大離角といい、太陽が沈んだ後、西空の高い位置に見える。
また、金星のやや上には火星も光っている。火星は、昨年12月に接近して以来すっかり遠ざかり、6月に入ると視直径は4.2秒角まで落ち込んでしまった。おかげで明るさも1.7等とまるで精彩がなくなってきた。それでも赤い輝きは健在だ。
