最近の星空

 

★7月の星空

 太平洋高気圧が勢力を強め、本州南岸に1ヶ月も停滞している梅雨前線が、ジワジワと北に押し上げられ、消滅してしまうと、待ちに待った梅雨明け。快晴になった夜空には、東から夏の華やかな星座たちが元気よく登場している。春の星座たちは、夏の星座の露払い役であるりゅう座、ヘルクレス座、へびつかい座に蹴散らされ、まだ薄明が残っている西の地平線へと押しやられてしまった。
7月7日は七夕祭。天の川の両岸に離れ離れになった、牽牛と織女が年に一度デートができるという中国の伝説だ。ところが7月7日の宵は、天の川の高度が低く、あまりはっきり見ることができない。では、なぜそんな条件の悪いときに七夕祭を行うのか?理由は簡単。今と昔では、使っているカレンダーがちがうからなのだ。現代は太陽の運行を基準にした太陽暦(新暦)を採用しているが、明治5年までは月の運行を基準にした、陰陽暦(旧暦)採用していた。旧正月とか旧盆といわれるのがそれだ。そして七夕も旧暦の7月7日のことなのだ。旧暦は新暦よりもだいたい1ヶ月遅れている。たとえば2024年の旧暦の7月7日は、新暦では8月10日になる。この頃なら梅雨も完全に明け天の川も高く昇るし、月齢も上弦前で明るくはないので、七夕祭にふさわしい星空となるわけだ。


 


7月25日 早朝の土星食

 月が太陽を隠すことを日食と言うが、月が星を隠すこともある。これを星食と呼んでいる。とくに惑星を隠す惑星食は、珍しい現象であり観る者を魅了する。そのなかでも特に神秘的な「土星食」が7月25日、日本では2014年以来10年ぶりに見られる。
 ただし残念なことに青空での現象となる。「なんだ」とがっかりしそうだが、土星の明るさは0.9等、本体視直径は18.5″角なので、透明度が高ければ口径10cm以上の望遠鏡なら、青空をバックに月齢18.9の月とともに見える可能性があるので、あきらめるのはまだ早い。
 土星食の魅力は、リングを伴った土星が、月の後ろにジワジワ吸い込まれていくところにある。たとえば名古屋では、午前6時30分に月の明るく輝く部分にリングの端が接する第1接触となり、6時30.7分に土星が完全に月の後ろに消える第2接触となる。土星が月の縁に接してから完全に隠れるのに要する時間は40秒ほどで、この時の月の高度は約23°。そして、7時23.6分に月欠けて影になっている部分からリングの端が姿を見せる第3接触となり、7時24.2分に土星が完全に姿を見せる第4接触となり食が終わる。
 土星のリングは傾きが小さく線上になっているため、青空でははっきり見えないかもしれないが、ぜひチャレンジしてみたい。