★3月の星空
春の足音が間近に響く3月だが、東京での平均気温は8.4°とまだまだ低い。それでも陽だまりの中は春の光に満ち溢れ、ポカポカと温まる心地よさを感じられる。思い切り背伸びをしたくなる瞬間だ。星空も冬から春へと選手交代をしているところ。凍りつくような夜空を賑わした冬の星座たちは、西の地平線をめざし、冬の最後の星座ふたご座が天頂に南中している。3月の和名は『弥生』。木や草がいよいよ生い茂る月という意味の、『木草弥生(いやおい)月』が詰まったことばだとか。やっと待ちに待った春が来たという感じがひしひしと伝わってくる。
宵空のオリオン座が西に傾き始めるころ、おおいぬ座のさらに南で、りゅうこつ座・とも座・らしんばん座・ほ座の4星座が南中する。どれもロマンチックな響きを感じない名前だが、すべて船に関係のある星座だ。しかしそれにはこんな理由がある。これら4星座は、かつてアルゴ座という大きな大きな船の星座だった。イアソン王子が、ヘルクレス、カストル・ポルックス、オルフェウス、アスクレピオスなど星界の有名人を引き連れて、冒険の航海に出た由緒正しき星座だ。ところが1752年に、フランスの天文学者ラカイユによって、大きすぎることを理由に解体されてしまった。

土星のリングが見えなくなる
3月24日 1回目の土星のリング消失
地球から望遠鏡で見る土星の姿はいつも同じ形ではなく、実は環の傾きが毎年少しずつ変わっている。理由は、土星の自転軸が26.7度ほど傾いているために、土星が太陽のまわりを30年かかって公転するうちに、我々は地球から土星を北から見降ろしたり、南から見上げたりするためだ。そして環の傾きが南から北へ変わるとき、またはその反対のとき、私たちは約15年ごとに土星の環を真横から見ることになる。まさに2025年は北から南へ移る年に当たっていて、そのとき環は土星を貫く1本の串のように見えるはずだが、限りなく薄い環は、まるでなかったかのようにまったく見えなくなってしまうのだ。これを「土星の環の消失」と呼んでいて、3月から5月と11月に起こる。
まず3月24日には地球から土星を真横から見ることにより環の消失が起こる。ただし、土星は3月13日が合なので、3月24日の環の消失は、残念ながら太陽に近すぎて見ることは難しそう。

その後5月7日までは、限りなく細い環の太陽の光が当たらない南面を地球に向けているため、その間もほとんど環を見ることができない。3回目の環の消失は11月25日ごろ再びほぼ真横になり起こる。この時土星は、宵の南の空に見え、最高の環のない土星の観望チャンスとなる。
