山田卓先生を想う2
山田卓先生のプラネタリウムの新しい試み
大人のための実験プラネタリウム (星ナビ2001年8月号より再掲 浅田執筆)
先日、プラネタリウムの老舗五島プラネタリウム閉館ショッキングな出来事が起こったが(現在はリニューアルされ復活している)、ここ数年、プラネタリウムの入館者数が激減している。原因はオートプラネタリウムの普及に伴い、プラネタリウム館が映画館化してしまったことにあると私は思う。しかし、プラネタリウムと映画はまったく別物、ソフトにかけられる制作費も制作時間もまったく違うのだ。映画と混同して観に行った観客はがっかりして帰ることになるだろう。それではと、結局入館者数を稼ぐためだけに、子供に受けるキャラクターものを上映し、さらに大人にそっぽを向かれる。こんな悪循環がプラネタリウムをだめにしてしまったのではないだろうか。
こんなプラネタリウムの衰退ぶりを嘆き悲しみ怒った山田卓氏はついに立ち上がった。山田卓氏は、名古屋市科学館で長年プラネタリウムをとおして天文教育に情熱を傾けられたプラネタリウムの鬼才である。
「プラネタリウムは、天文フアンと称するマニアを育てるところでもなければ、子どもに媚びをうるところでもありません。大人、子どもにかかわらず、理系、文系にもかかわらず、人間にとってだれもが生きるのに必要な「宇宙」という概念について考えさせてくれるところでありたいとおもうのです」という思いとともに、プラネタリウムの新しいあり方を三重県四日市市立博物館で実践し始めた。
それが今回紹介する「超・プラネタリウム(Planetarium after planetarium)大人のための実験プラネタリウム」だ。スタイルは、今までのようなプラネタリウム解説ではない。1回ごとに異なるテーマを設定し、そのテーマにふさわしいスペシャリストを迎えて、対談や実験や質疑を交えながら観客とともにわかりやすく楽しく宇宙を考えてゆこうというもの。
今回はその2回目。テーマは「ブラックホールの作り方教えます」。ゲストは、名古屋大学理学部助教授田原譲氏。
館内は満席。ざわめきの中で何かが始まろうとしているという熱気が感じられる。まず、山田先生の軽妙な解説による春の星座案内・月面案内から始まり、続いて山田氏ご自身の無重力体験ビデオから、実験をまじえた重力の話に入っていった。そして今回のテーマであるブラックホールが登場。当博物館天文係手作りという、柔軟性のある布で作った空間に、鉄の玉を落としブラックホールができることを示し、そこに観客から選ばれた子供が小さなボールを転がして空間が曲がっていることを体感する実験を行った。続いて、田原助教授の登場。ブラックホールの講義と山田氏との対談・質疑応答。
山田卓氏、ゲストの田原氏そして観客とがドームという宇宙の中でひとつになって楽しんだという充実感が感じられるあっという間の1時間半だった。しかしそれだけでは終わらなかった。なんと質問し足りなかった観客のために、別室で座談会を設けるというサービスぶりだ。
終了後、第1回「宇宙に果てがある理由」でとったアンケート結果を見せてもらったが、「こんなプラネタリウムを待っていました」「一般のプラネタリウムでは満足感がなかったが今回のは良かった」「あと9回全部観ようと思います」「ドームの中で実験とは驚いたが、わかりやすくよかった」等、好評を裏付ける意見が大半を占めていた。
このシリーズ番組は、一般の方はもちろん、プラネタリウム関係者にもぜひ観てもらいたいと思った。今後のプラネタリウムの進むべき道が見えてくるはずである。残りあと6回、今後の予定は次のとおりだ。
第4回 9月23日 謎の暗黒物質と銀河の不思議な関係
第5回 10月28日 小惑星が地球に衝突するとき
第6回 11月25日 星座早見盤は子どものオモチャではない
第7回 1月27日 なぜ宇宙は膨張するのか
第8回 2月24日 宇宙飛行士は浦島太郎になれるか?
第9回 3月24日 21世紀にETを発見できるか
日時:毎月第4日曜日 午前10時30分~12時(ただしハプニングも予想される生番組なので終了時刻を確定できない。終了時刻は話の弾み具合で、30分程度延長することもあ
四日市市立博物館(TEL.0593-55-2703)
ホームページ:http://www.city.yokkaichi.mie.jp/museum/