みずがめ座になったガニメデス
逆三角形のやぎ座が西に傾くと、続いて黄道12星座11番目の「みずがめ座」が南の空に登場する。ペガスス座とみなみのうお座の間にある星座で、全天でベスト10に入る大きな星座だ。3等級の星が多い割には形がはっきりしないので、今ひとつつかみ所がない星座ではある。目印は、ペガスス座の鼻ずらのすぐ南にあるα星と、そのすぐ東で4~5等星がつくる三矢マークだ。そして水が流れ行く先には、みなみのうお座のフォマルハウトが輝いている。
★ゼウスにさらわれたトロイアの美少年
大神ゼウスは、いつも自分の身の回りの世話をさせていた娘ヘベが、天に昇ったヘルクレスと結婚することになったため、ヘベに替わって世話をしてくれる子供を探すことになった。そんなときゼウスの目にとまったのが、トロイアの王子でトロイア一の美少年といわれたガニメデスだった。
ゼウスはさっそくワシ(わし座)に化けて、ガニメデスをさらってしまったのである。ガニメデスの父親には、その代償として“黄金のブドウの木”が与えられた。ゼウスが、少女ではなく少年をさらった訳は、男なら結婚して自分の元を去っていってしまうことはないと考えたからだという。
レンブラント画
●水瓶を担ぐガニメデス
ギリシャ神話では、ガニメデスの姿を両親に見せるために創った星座といわれる割には、少年が担いだ水瓶から液体がこぼれている今一つパッとしない星座だし、みずがめ座というネーミングもいかがなものかと思ってしまう。水も滴るいい男と言いたいのか・・・もっともラテン名は「アクエリアス」だ。直訳すると「水運び人」といったところ。いずれにしても水に深く関係している。
ところで、ガニメデス少年が担いでいる瓶からはどんな液体が流れているのだろう?「水でしょ」と言いたいところだが、もう少し想像力を働かせてみよう。ラテン名がアクエリアスということは・・・でも、みずがめ座の目印が三ツ矢マークだということは・・・ガニメデススはオリンポスの神殿で不老長寿の酒ネクトリスを注いでいたのだから・・・と
連想ゲームのように溢れてくるが、やはり正解は水なのだろう。
なぜなら星座の故郷古代バビロニアで、この星座が生まれたときから、手の先や手に持った瓶から水が流れ出る絵が描かれているからだ。その理由は、日の出直前にこの星座が東の空に姿を見せると雨季がやって来たからである。当時の民にとっては、水は太陽とともに幸せをもたらす貴重な存在だった。それを物語るように、みずがめ座の星々には、「幸せ」をキーワードとした名前が付けられている。