ああ半影月食

今朝、今年2回目の半影月食が起こった。
半影月食とは、太陽に照らされてできた地球の影のうち、本影の周りを取り巻く薄暗い半影の中にしか入らないどちらかといえばパッとしない月食のことだ。しかも今回は満月の半分ほどしか半影の中に入らないという超控えめの月食だ。さらに食最大時刻が4時25分でまさに沈もうとするところ。おまけに空が白々と明けてきている状況。そしてそれに輪をかけるように曇りがちの天気。普通ならスルーして夢の世界に浸るのが定石だ。しかし、大学の映像授業で、学生たちに「6月6日の半影月食か6月21日の部分月食を観察して感想文を提出せよ」という課題を出してしまったため、責任上見ないわけにはいかない。そこで、がんばって3時に起きることにした。
スマホのアラーム音に眠りを妨げられ、仕方なく起き上がると「内心曇っているといいな」と思いながら屋上へ向かう。窓越しに見ると「ありゃりゃ、雲の合間にオレンジ色の輪郭がボケボケの満月が浮かんでいるではないか」一番いやな天気。時刻は3時10分、食が始まって30分弱過ぎている。眠い目をこすりながら望遠鏡を月に向け、「ひょっとしたら満月の南端が薄暗くなっているかも」と、とにかく覗いてみる。「うーん最悪。なんもわからん」。「そーだ、写真を撮ろう」目よりも写真の方がコントラストがあるので、何かしらわかるかもしれない。雲の影響で明るさがコロコロ変わる月を、シャッタースピードを変えながら撮ってはモニターで再生してチェック。「なんとなく湿りの海の南が薄暗くなっているような・・・」
そのまま片っ端から撮影したが、いよいよあたりは明るくなってくるし、月の高度は低くなるばかりで、瀕死の月の様相。3時30分まで撮影したが、もはやこれまで。撮影を終えると部屋に戻りパソコンのモニターでチェックする。フォトショップで、トーンカーブをいじり月を明るくしたり暗くしたり、コントラストを上げたり下げたり、悪戦苦闘して何とか月の南部がほんのり薄暗く感じられるような画像になった。それが下の右側のオレンジ色の月だ。左側は1月11日の半影月食の写真だが、この時は月がしっかり半影の中に入ったので本影に近い南部がしっかり暗くなっていることがわかる。それに引き換え今回の半影月食は、月の半分しか半影に入らなかったので、ほとんどわからないという結果になった。半影はいかに淡いかということを改めて知ることができた半影月食だった。
 今年は、11月30日にも半影月食が起こるが、今度はなかなかの好条件なので、少しだけ楽しみにしたい。

2020年06月06日