月と金星のニアミス

 春から続いている明け方の東の空での4惑星整列は、いよいよクライマックスを迎えているが、その中でもメジャーな現象が5月27日の金星食だった。ただし金星食が起こるのは鹿児島以南の沖縄や小笠原のことで、中部地方ではニアミスとなった。ただ残念なことに昼間の現象だ。前日の雨模様とは打って変わって、名古屋では午前中から青空が広がり始め、12時ごろにはほぼ快晴。これならばっちりと鼻歌交じりで準備を始めた。目盛環を使って太陽から金星を導入すると、青空をバックにきらりと光る金星と月齢26の月も淡いながらもしっかり見える。この後天気は回復傾向なので何の心配もない。ニアミスまでまだ2時間あるので余裕だ。
 ところがそう甘くはなかった、13時を過ぎたころから西の空で発生した雲が次々に流れてきて、月や金星を覆い隠す。おまけに月も金星も雲のある西へ西へと傾いて行くので最悪だ。月が金星に最も近づくのは13時49分。しかし月と金星は雲の向こうに隠れたままで一向に姿を見せようとしない。時計を見るともう14時。「あじゃじゃ最接近を過ぎてしまった・・・」でもまあ、食になるわけでもないし、最接近を逃したところで月のそばに金星がいるは変わらない。待つこと11分。雲の切れ間の青色の部分が迫って来る。チャンスとばかりに、カメラのファインダーを覗きこむ。やがて金星がうっすらと見え始め雲が薄くなるにつれ強烈な光点となってゆく。ところが月はまるでそこにはいないかのように全く見えない。仕方がないので金星を画面の中央に合わせてシャッター速度を変えながら何枚か撮影するが、あっという間に雲が迫って来る。14時30分ごろ再度シャッターチャンスが訪れたが、それ以後はThe End。
 部屋に戻り撮影した画像をパソコンでチェック。「おおっ、かすかながら月も写っているではないか!」あとは不自然にならない程度にコントラストを上げて月を強調するのみ。そうして出来上がったのがこの写真だ。月がはっきり見えた12時半ごろに撮影しておけばよかったと後悔しきりの、月と金星のニアミスであった。


撮影データ
2022年5月27日14:14 FCT125長焦点(f705mm) オリンパスE-M5Mk2ボディ、ISO LOW 1/3200″
 

2022年05月29日